並盛公園の一角で、広葉樹にもたれかかって煙草を堂々と吸っている未成年がいた。
無論、獄寺隼人である。ツナと別れてから約1時間、この公園で煙草を吸いっぱなし。半箱は間違いなく消費していた。それなのに何故警察に捕まらないのかといえば、こうである。
オーラがそうさせないのだ。この際意味不明という言葉は聴かないこととする。
―さて、獄寺はただ無意味に煙草を半箱消費していたわけではない。何を考えていたのかといえば、勿論、
の行方である。
さすがにが並高に編入してまだ2週間なので、あまり親しい関係ではなく、何処にがいるのか予想は難しいのだ。
それでも、いくつか目星はついていた。今は、どこから攻めていこうか順番を決めていたところである。
「…よし、さっさとあいつを見つけっか。」
煙草を携帯灰皿に押し込むと、先ほどの台詞とは裏腹にのんびりと歩き出した。
「…で、どうしたの?」
「えっと…聞きたいことがあって。」
「ん?」
と誠は、ベンチに並んで座っていた。
は頬を人差し指で掻きながら、口を開いた。
「あのさ…。」
「ん?」
「マフィアって…なに?」
「……え?」
さっきまでにこやかだった誠の顔が、硬直した。
「あっ、もしかして一般常識?それとも聞いたらやばい事だった?そしたらごめんなさい!」
カーッと顔に血を集めながら、はひたすら謝った。それを見て、どうにか硬直をといた誠。今度は誠が頬を掻いて、「いや…」と否定した。
「僕は別にやばいこととは思わないけど、ここにきてまで…そんなことを知りたかったの?」
「あの…この間喫茶店で意味深な話してたから、詳しく知ってるかなと思って…。」
あぁ、あれか。
誠はなるほど、と呟いて、簡単に話して聞かせた。ついでに、自分の両親のことを。
「僕の両親は、僕が生まれる前、人を殺す仕事をしていた。マフィア、政治家、時には一般人。依頼されたら、どんな人だって殺した。その世界で仲良くしていた仲間でさえ、時に敵になった。殺しの才能は、その頃の殺し屋の中では飛びぬけていたらしい。なんだって、ヴァリアーに一度スカウトされたくらいなんだから。」
「…ヴァ…リアー?」
「ボンゴレファミリーっていう、マフィアの暗殺部隊だよ。でも、両親はそれを断った。両親はボンゴレが嫌いだった。正確には、ボンゴレ9代目ボスの息子が大嫌いだった。あんな、躾がなってない10代目候補の部下にはなりたくないってね。今でも、ボンゴレのことは毎日晩餐の話題になる。そろそろ9代目も引退の時期だ。ああ、あの10代目が暴れだすのかってね。」
「でも…今は美容師だよね?誠のご両親。」
「ああ。引退したとはいえ、刃物は手放せなかったんだよ。そのために、わざわざ美容師の資格を取ったのさ。髪とはいえ、もとは人の皮膚の一部だ。血はでなくても切ってることには変わらない。まったく…息子の僕でさえ、その姿はこわいよ。今でもマフィアとか、そっちの世界とは完全に縁を切ってないらしいし、僕もそこそこ成長したから、いつか復帰するかもね。」
そこまで話し終えると、誠は立ち上がってんーと伸びをした。
「脱線したね。怖い話聞かせてごめん。でも、僕は両親のように人を殺すようなことはしないよ。…で、ほかにマフィアについて知りたいことはない?」
「…ううん。大丈夫、ありがとう。」
は、ベンチに座ったままにっこり微笑んだ。普段の誠だったら、その笑みに顔を赤く染めるだろうが、今回は違った。
「は強いね。」
ほんの少し、うらやましがるようなその目で、誠はそういった。
「え…?強いって?」
は首をかしげるが、誠は目を伏せ、またにもどして、首を横にふった。
「…いいや。なんでもないよ。」
「……?」
「」
「うん?」
「呼んでみたかっただけ。」
「へ?なに、それ。」
が頬をふくらます姿をみて、クスクス笑い声をもらす。ああ、はやっぱりだ。僕の好きなだ。
が新明を離れる前に戻ったような、そんな錯覚を受けたのもつかの間。誠は、新明には見かけない銀髪を見た。
誰だっただろう…と思う前に、いやでも思い出した。あまり会いたいと思う人物ではない。チッと、舌打ちをした。
には聞こえなかったのか「誠、聞いてる?」とますます怒ってる。
まだ遠い。そう思った時には、すでにの手を引いていた。
「えっ?誠、どうしたの?」
「不審者が入ってきた。急いで校外にでよう。」
「??」
は足が速いから、僕が本気で走っても大丈夫だろう…そう思って、誠は野球部ナンバー2持ち前の足をフル稼働させた。
「チッ…やっぱりここにもいねーのか…?」
わざわざ手続きをする気はねーし、不法侵入したから時間がねーんだけど…。
それに、ここには山本や、あの天海ってヤローもいる。奴らに見つかったらどうなるか…。
ただでさえ、格好で目立つ獄寺。陸上部の女子だろうか、ランニングをやめ、獄寺に釘付けになっている。
そんなことは気にも留めず、獄寺はただ山本、誠、の3人の姿だけを集中して探していた。
それなのに…獄寺の注意は結局だけに対するものだったのか、あっさり見つかってしまった。
「お、獄寺。どうした?こんなところに。」
「なっ…。」
顔を引きつらせながら、獄寺は振り向く。残念なことに、そこにはとても、ムカつくくらいよく知っている顔があった。
「山本…ッ。」
「ん?」
絶対に会いたくなかったのに…!!だが、会ってしまったものは仕方ない。
「山本。」
「なんだ?」
「お前…が何処いるか知ってるか。」
「か?さぁ…ん?でも今日は学校だろ?学校行ってんじゃないのか?」
「アホかお前。そうだったらここになんかこねーよ。」
「ハハッ、それもそーだな!ってことは、今日は休みか?じゃあ家にいんじゃね?」
だっからそうだったらこねーつの…!!
獄寺はキレたい思いをどうにか耐え、できるだけあの日のことを話すまいと努力しながら山本の予測をつぶしていく。
「…ハゲ担任が何度電話しても出ねーんだよ。」
「へぇ…こっちじゃそんなことなかったのにな。あいつ親いないし遠くにでかけるってこともないだろうけど…。」
「は!?あいつ、1人暮らしなのか?」
「ん?あぁ、それどころか、親戚なんて全然いないらしいぜ。なんだ、獄寺知らなかったのか?」
聞いてねぇよ、んなこと…。
チクリと、心が痛んだ。あの日、家に帰ったは1人で…。
「だから、幼なじみの誠だけが頼りだったとかって。」
「そうだったのか…。」
罪悪感が増す獄寺。とにかく、早くと会わなければと再認識する。
「ん?じゃあ、もしかすっと…天海は何処だ?」
「誠はさっき、10キロランニングしてたけど…もう終わったんじゃねーかな…。」
「とにかく、ここにいるんだな?」
「あぁ…「わかった。サンキュー山本!」
走る獄寺。その姿を見送る山本。
「あ…じゃあな…?」
「もしかすると、脈アリか、あれ…?」
2008/10/19