「さん…やっぱり学校来なかったね。」
「……。」
月曜日。登校日であるはずの今日、は学校を無断欠席した。
ツナ達の担任が何度自宅に連絡しても、出なかったらしい。
部活に所属していない二人は、放課後になるとまっすぐツナの家に向かっていた。
「さんの家、知ってればよかったのにね…。」
「……。」
反応がない獄寺を不思議に思い、足を止めるツナ。しかし、それにも気付かずに獄寺は歩を進めていた。
「…獄寺君?」
思わず、ツナは彼の名を呼んだ。獄寺はそれに足を止めると、ゆっくりと振り返る。
「えっ…あ、はい。なんでしょう?」
「大丈夫?ずっとボーッとしてるけど。」
ツナが首をかしげながら聞くと、獄寺はツナから目を逸らし、小さな声で言った。
「…すみません。」
「いや、謝ることじゃないんだ。それより…もしかしてさんのこと、気になるの?」
「…はい。オレとが喧嘩しさえしなければ、こんなことにはならなかったのにと…。」
その獄寺の様子に、ツナは首を横に振る。
「そんな、獄寺君のせいじゃないよ。あのあと、仲直りはできたんでしょ?」
「…はい。」
「なら、獄寺君だけがそう気負う必要はないよ。」
「そんな…。」
「あの夜、さんがショックを受けた原因は、獄寺君だけじゃない。オレや、雲雀さんにもあるんだから。だから獄寺君だけが責任をもたなくていいんだよ。」
ツナは微笑みながらそう言い、帰宅を促した。獄寺は一拍置いて、それに無言で頷いた。
淡々と同じ歩調であるくふたりだが、会話は全く交わされることはなかった。
そして、沢田宅に到着した。
「じゃあね。」
「はい、お疲れ様でした。」
門前で交わす挨拶。それに合わせて獄寺は一礼すると、ツナが家に入るのを待たずに歩き始めてしまった。
ツナが、その背中が消えるまで見続けていたのにも気付かずに。
「獄寺君…。」
草壁は、応接室で携帯をいじりながら考えていた。
雲雀は応接室にいない。朝から、1日中。
あの夜の出来事。一方的に指示されたが、全てが終わればそれについて詳しく話すと雲雀に言われていた草壁。だが、それ以来雲雀は音信不通で、結局何も情報を得られないままなのだ。
獄寺を探し、偶然を装って会う。雲雀の所在について聞かれたら、この住所を教えろ―。その住所とは、最近、並盛にある不動産屋から無償で借りた一軒家だった。
その最近とは、と雲雀が初めて接触した直後のことだ。
つまり、雲雀の本来の自宅ではない。
何も知らないとはいえ、獄寺が雲雀の所在を探していたのにが関わっていることぐらいは悟っていたが…。
「恭さん…。」
一体、あの夜に何があった?
草壁は、もどかしさに携帯を強く握った。
雲雀はシーツが乱れたベッドの上でただ転がっていた。
上半身は未だ肉体を服で包むことなくさらし、制服のズボンを着用したままで。
カーテンは閉じられており、電気類も一切つけられていないが、カーテン越しの日光で部屋はどうにか闇から逃れている。
今から学校に行けば、部活に精を出す生徒達を見ることはできるだろう。
教師や風紀委員達の目を盗んで、校則を破っている生徒もいるかもしれない。
それに苛立ちを覚えながらも、そいつ等を咬み殺しに学校に行く気にはなれなかった。
正直、僕は今、戸惑っている。
を襲うそぶりをすることは計画に組み込んでいた。でも、途中からを獄寺隼人に渡すのが惜しいと思ってしまった。
あの時、一瞬欲情を抑えられなかったのもたしか。
あのタイミングで、獄寺隼人が来てなかったら、僕は…獣になっていたかもしれない。
それを恥じた。だから、学校には行かなかった。
明日は…さすがに行かないといけない。
草壁に会ったら、何と言われるだろう。まだあの日のことを説明してないし、今日の無断欠席について聞いてくるかもしれない。
まぁ…煩かったら咬み殺せばいいか。
それより…は、今日学校に行ったのだろうか…。
「10km終わりっ。」
ウェイトは両手両足に5kgずつ。五話以降、一切出番がなかった新明高校野球部No.2の天海誠はあの日以来、必死の練習を続けていた。と再会したことが励みになったのか、それともが男に囲まれていたのが癪だったのか。本人以外はわからないが、打率が回復の兆しを見せているのは確かだった。
「あの…。」
「ん、なに…!?」
背後から聞こえる声に振り返ると、誠はそのまま口を開けて驚いた表情を作った。
「君は…。」
なんとかつむいだ言葉に、彼女は微笑み、
「練習頑張ってるね、誠。」
と言ってみせた。
「…。」
そう。誠に声をかけたのは―その人だったのだ。
「こんにちは、誠。」
「なんで…新明のグラウンドにいるの?」
「実は、どうしても誠に用があって。」
「僕に?」
少し困った様子で頷く。それを見て、誠は目の色を変えた。
「まさか!!奴らに集団レイプされたとか、羞恥プレイとかされたの!?」
誠は叫んだ。確認しておくが、此処は新明高校のグラウンドで、時は平日の放課後である。
当然、多くの部活がグラウンドで練習をしており…、その大半は誠の発言で行動を止めてしまった。
「えっ…えっと…違う…けど…。」
頬を赤らめ、やっとの思いで言葉をつむぐ。その反応で、陸は誠てて
「あ、ごめん…。」
と謝罪した。
「とりあえず…あそこで話は聞くよ。」
誠はグラウンドの隅にあるベンチを指した。
「うん…。」
は、若干心配そうに頷いて、ベンチへと歩を進めた。
2008/10/09