「…江戸幕府2代目将軍は?」
「えーっと、秀忠?」
「そうだ。10代目、7代目将軍は?」
「う…うーん…いえ、さだ?」
「…そうっス。」
「違うよ!それは13代将軍。7代目は家継だよ、ツナさん。それにしても、なんで獄寺君はツナさんの間違いを否定できないんです―ごめんなさい。」
「あ、ううん。平気だよ、ついた癖はなかなかなおらないもんね。」
獄寺君がさんの敬語について指摘してから、5日。オレに対しては、だいぶ取れてきたけど、獄寺君にはまだまだちゃんと話せないみたいだ。
今日は宿題の片付けを兼ねて、勉強会を開いている。会場は、オレの家。
なんとなく沈黙がオレの部屋を支配する。
すると。
「ツナ〜? 京子ちゃんが来てるわよ〜?」
「え? 京子ちゃん? 分かった、今行くよ!」
「…誰ですか?」
「あ、オレの…友達!」
微妙なところなんだけどね…。
心のなかで呟きつつ、階段をおりて玄関を覗くと、やっぱり可愛い京子ちゃんの姿が。
中学校の頃から全然変わらないもんな〜…。
「あ、ツナ君。ごめんね、急に来て。」
「いや、全然大丈夫だよ。で、どうしたの?」
「あのね、お兄ちゃんが近々試合があるから、是非ツナ君もって…。」
「オレも…また試合に出ろって?」
「うん…ツナ君は断るって言ったのに、お兄ちゃん、本人に聞いてからにしろって言うんだから…。」
「そっか…とりあえず、ここじゃあれだから、上がってよ。」
「じゃあ、お邪魔します…。」
「実は紹介したい女の子がいるんだ。編入生なんだけど、まだ女の子の友達がいなくて…。」
「そうなの? そういえば、ツナ君のクラスに来たってことは聞いてたけど、会ったことはなかったなぁ。」
男だけじゃあ、さんも居辛いよね…。
それに、あの沈黙が解けるかもしれないし。
そう思った矢先、
「お邪魔しました、10代目。」
「え? 獄寺君?」
なんだか怖いオーラを発しながら、獄寺君は玄関を飛び出して行った。
「…獄寺君も来てたの?」
「うん…上でなにがあったんだろう?」
「…あ。」
「どうしたの?」
「外…雨降ってるんだけど、獄寺君傘持ってなかったよね…。」
「……。」
獄寺君なら、別に傘がなくってもいいだろうけど…(いや、見捨てろってわけじゃないんだけど)。
「獄寺君!!」
すぐにさんが下りてくる。そして、玄関で立ちすくしているオレ達を見て、少し驚愕の表情を見せた。
「あ…。」
「…えと、初めまして、笹川京子です。」
「あぁ…です…って、すいません獄寺君を追わないと!!」
そういってさんもまた飛び出していった(ちゃんと傘は持って)。
「…2人とも、大丈夫かなぁ?」
「さぁ…? とにかく、オレ達が行っても仕方ないだろうし、上行こうか…。」
京子ちゃんを巻き込んでられないし、2人の問題だもんね(たぶん)。
「…どうして10代目にはタメで、オレにはそれじゃないんだ?」
「え…あの、その…。」
「オレ、そんなに話しづらいか?」
「…ううん。そんなわけじゃない…。」
「じゃあ何だってんだよ!!」
「!!」
「オレが嫌いか?それとも10代目が…!!」
そうして、獄寺は飛び出した。
は涙目でそれを見送ったが、すぐに我に返り獄寺の後を追った―。
どうして、どうしてこんなことをしてるんだ?
雨で服が身体に引っ付いて動きにくい。でも、そんなことはどうだっていいんだ。
何故か、許せなかった。
10代目には普通に話してんのに、オレにはそうでないが。
だからって当たっていいわけでもないのに―悪い癖だ。感情に任せて、行動してしまうのは。
10代目の部屋を飛び出す間際、あいつの、その瞳は赤みを帯び、潤んでいた。
それを分かっていて、オレは―。
そこまで考えて、全ての思考を強制的に閉ざした。
目から、熱いものがこぼれて、落ちる。
雨に少しばかり感謝、しなきゃな。
一瞬だけ考え、後は立ち尽くしているだけにした。
そこは何故か、2年9ヶ月を過ごした学校の正門だった。
何処にいるの?
獄寺君が好きだから、緊張して、上手く話せなかった。
それが、獄寺君を怒らせてしまった。
内心、「そんなことで怒ることもないだろうに。」とは思ってた。
でも、自分に非がある。
何を思うよりも先に、謝らなきゃ。
傘のせいで、上手く走れない。
そう思ったから、すぐに閉じたけど、逆に濡れた服が重たい。
視界がはっきりしないから、人とぶつかりそうになる。実際、2,3人にぶつかって、それの処理に時間がかかった。
並盛を走り回って、そしていつの間にか…
迷子になっていた。
構ってられるかと、走り続ける。でも、体力が尽きて、最終的にたどり着いた先は、彼らの母校。
「並…盛…中学校…?」
正門に彫られた並盛中学校の文字。
なんとなく見ていると、そのすぐ横に、見慣れた銀髪があった。
「獄寺…君…。」
08/07/18