「おはようございます、ツナさん、獄寺君。」
「え、あ…おはよう。さん。」
教室に入って、2人に挨拶した途端、目を点にされた。
「お前…雲雀に殺られなかったのか?」
獄寺君が凄い形相で言う。ちょっと怖い。
「別に…お腹一回けられただけで、病院まで送ってもらいました。」
「病院まで!?雲雀さん…いつのまにそんなに丸くなったの…?」
「普通なら、骨の4,5本は平気で折るはずなのに…。」
「…どうしたんでしょう…ね?」
昨日のことは、言ってはいけない気がした。
何より、呼ばれた原因を“遅刻しそうで助けてもらった”からと話していたから、話のつじづまが合わなくなるし(獄寺君のお姉さんに似ていたから呼ばれたんだけど)。
それに…全部話そうと思ったら、バイクの上でした会話も言わなきゃいけない。
「…まぁ、とにかく無事でよかったよ。」
ツナさんが、まだぎこちない笑顔で言った(そんなに雲雀さんの行為が特殊だったらしい)。
「……。」
獄寺君は、まだ何か考え込んでいるみたいだった。

オレは、の所為でろくに授業を聞けなかった(元から聞く気もなかったが)。
確かに、昨日はボコボコになってくればいいと思っていたのに、今朝なにも変わった様子が無く登校して、オレ達に挨拶してきた時には、何故かホッとしていた。
正直、が来た時は最低だと思った。
なのに、今はこうして普通に話してるし、ボンゴレ入ファミリーの時も、あっさり承諾してしまった。
オレは一体どうしたんだ…。
「…獄寺君、どうしたんですか?」
弁当を膝に置いてチビチビと食べていたが、不意にオレを見て言った。
「食欲がないんですか?さっきから焼きそばパン片手にボーっとしてますけど…。」
お前の所為さ。お前の所為で、オレの脳内どうかしてる。
そう、どうかしてるんだ。だから、こんなことをに言ってしまったんだ。
「なぁ、どうしてクラスメートなのにわざわざ敬語なんだ?」

突然そんなことを聞かれて、正直焦った。
「え、別に…特に意味はないのですけど…。」
「じゃあ、敬語止めろ。」
何とか返事した時にはすぐに返されて
「はい…?」
いきなり止めろといわれても…。
「こっちがうっとおしいんだよ。ね?10代目?」
「え…う、うん。確かに敬語はちょっとやりづらいかな…。」
「ツナさんまで…そんなにやりづらいですか?」
「まぁ、ね。オレとしても、タメのほうが…。」
初対面の時から敬語で通してきたから、敬語のほうが自然なんだけどな…。でも、そんなにやりづらいなら…。
「…わかりました。出来るだけ努力…してみます。」
「もう敬語。」
「…わかった、よ。」

『ハハハッ。そりゃあ災難なのな〜。』
「他人事みたいに言わないでよ。」
『ホント他人事だもんな。』
「……。」
『まぁ、雲雀に眼を付けられて、さらに余計な問題まで抱えちまったら、そりゃあ悩むな。』
「うん…どうすればいいのかな…。」
『おとなしく流れに任せるのが一番じゃねーの?雲雀はともかく、敬語なんてすぐにどうにでもなるって。』
「そうかな…。」
『オレん時だって、すぐに慣れたじゃねーか、2人ともいい奴だし、平気だって。』
「確かに…2人ともいい人だけど…。」
『な?』
「…わかった、ありがとう。山本君。」
『またなんかあったら言えな?特に、獄寺のこと。』
「うん…そうする。」
『じゃあ、おやすみ。』
「おやすみ。」
山本君には、本当に助けてもらってる。
ほかの人には言えない事を、素直に相談できるし、ちゃんと一緒になって考えてくれる。
将来カウンセラーになれるんじゃないかな。でも、山本君は野球大好きだもんね。
とにかく、これからどうすればいいのかわからないけど、周囲にはとてもいい人たちがたくさんいる。少しずつ慣れていけばいいんだ―。

2008/07/12