「う〜んっ。晴れてよかったなー!」
オレは大きく伸びをして、たちが来てないか辺りを見回した。
「…まだ、いないか。」
待ち合わせは並盛商店街入口。に並盛の案内を兼ねて、遊ぶ予定だった。
しかし、並高に行くとは聞いていたが、まさかツナ達と同じクラスだとは、思わなかったぜ。
それもすぐに仲良くなって、どうも運命的なもんがあんのかもな。
電話とかで話はしたが、実際に会うのは1年ぶりだ。
「山本君!」
「…お。」
待ち合わせをしっかり守る癖は変わらないらしい。は時間ほぼぴったりに到着した。
「久しぶりだね。」
「あぁ、並高には馴染んだか?」
「うーん…ツナさん達のお陰で、なんとか。」
「そっか。…あれ、お前眼鏡なんかかけてたっけ?」
「…あぁ、これね。」
はそう前置きして話してくれた。眼鏡の訳を。しかし、眼鏡をつけると、大抵の人はイメージが変わるのに、は全然変わらない。どうしてだろうな?
「そっか、獄寺な〜そういや、ビアンキ姉さんに似てるな。」
「…ビアンキって言うんだ、獄寺君のお姉さん。」
「あぁ…って知らないのか?」
「うん。詳しくは聞いてないから。どうしてお姉さんの顔で倒れるのかもよく聞いてないの。」
それだけの疑問があるのに、よく納得したな…。
オレがそう思ってると、ツナと獄寺がやってきた。
「山本!」
「ツナ!久しぶりだな〜。相変わらずってとこか。」
中学生時代からあった身長差は、あまり変わらない。ツナの雰囲気も、ほとんど昔のままだった。
「ハハ、山本、1年の間に、また身長伸びた?」
「ん?そうか?…でも牛乳飲んでるしな!」
「テメー、10代目となれなれしくしてんじゃねー!」
オレとツナが話してると、獄寺が突っかかってくる。この感じも、変わらないのな。
「獄寺、お前も全然変わんねーな!」
「なっ…。」
オレが言うと、獄寺は黙ってしまった。オレ、なんか変なこと言ったか?
クスクス…。と声が聞こえたと思ったら、が笑っていた。
「本当に3人って、仲がいいんですね。ツナさんの言うとおりでした。私、並高に編入してよかった。」
の顔を見て、獄寺は少し嫌そうな顔をする。
「…お前、いたのか…。」
「ん、獄寺今頃気付いたのか?」
そういや、が素顔だと獄寺倒れちまうんだよな。(さっき聞いた話からすると)そんなに姉さんに似てるか…?
「あ、獄寺君…この間は、ごめんなさい。」
「は?なんの話だ。」
「私の顔で…倒れちゃったから…。」
は、やはりそのことを気にしてるのか、急におとなしくなった。
「…別に、お前のせいじゃねーだろ。オレの問題だ、気にするな。それに、オレこそ、謝らねーと…。」
「え?」
「オレが倒れたりするから、わざわざ眼鏡かけたんだろ?」
獄寺も、それを気にしてるらしい。獄寺はちゃんと眼鏡のこと気付いてたんだな。
「ううん。私、眼鏡が欲しかったから…きっかけがなかっただけで。気にしないで下さい。」
の身長は、獄寺より10センチくらい下。だから、自然と上目使いになる。それに獄寺は少し照れながら、「…よろしくな。」と言った。
は、獄寺の対応のよさに軽く驚きの表情を見せたが、やがてすぐに笑顔になって、
「うん、私も、よろしくお願いします。」
2人の間にある溝が、少しだけ浅くなったらしい。
「…じゃあ、そろそろいこっか。」
ツナが声をかけると、
「はい、10代目!」
「うん、ツナさん。」
と同時に言った。なんだよ、こいつら、仲良すぎじゃね?
「…山本?」
ツナはオレの返事がないことを不思議に思ったのか、心配した顔で言った。
「あ、あぁ、行こうぜ、ツナ!」
このとき、いくつか殺気を感じたが、気のせいだと思ってあまり気にとめなかった。
オレ達は、商店街の中にある喫茶店を訪れた。
皆レモンティーを頼んだのに、オレだけココアって…と思ったけど、それ以外は楽しい時間が続いた。
「そういえば、獄寺君はどうしてツナさんのことを『10代目』と呼ぶのですか?」
唐突にさんが言うものだから、オレはココアを吹き出した。
「えっ!ツナさん大丈夫?」
「10代目!?」
「ツナ!!」
皆でオレが吹いたココアを片付けてくれる。綺麗になって、オレが新しいココアを注文して待ってると、
「で、どうして『10代目』なんですか?」
と、さんが改めて聞きなおした。獄寺君は、面倒くさそうに
「あぁ?勿論、10代目は未来のボンゴレファm「あーっ!!」
必死だよ、もう必死。さんまでマフィアとかに関わって欲しくないし!
「?」
「ツナ?」
「あ、い、今、じゅ、住宅街で火事があったって、テレビで速報やってたから!」
「…ここ、テレビないよ?」
しまった…!
「…え、えと、その…。」
オレがあたふたしてると、獄寺君が口を開いた。フォ、フォローしてくれる…と思ったのだけれど。
「10代目は超直感で…「あーっ!獄寺君ストップ!ちょっとタンマ!!」
なんで超直感なんだよ!そんな電波キャッチできないよ!
オレがあんまり大声で叫ぶから、皆引いちゃって。特に、さんが…。
「ツナさん…今度は、どうしました?」
「え、えーと…。」
もう、言い訳はできない。こうなったら…
「獄寺君!ちょっと付いてきて!」
オレは獄寺君の手を引いて、男子トイレへ走った。
「じゅ、10代目!?」
「…ツナさん、いきなりどうしちゃったのかな…。」
「ハハハ、どうしたんだろーな。」
〜男子トイレ〜
「10代目!何がどうしたんですか!?」
「…あのね、ちょっと覚えていてもらいたいんだけど、さんがいるときは、超直感とか、ボンゴレとか、マフィアに関する言葉は、一切禁止だからね。」
オレは出る限りの殺気を放ちながら、言った。
「…どうしてですか?」
どうやら、殺気は利いているらしい。獄寺君は、軽く緊張しながら聞いた。
「どうしてって…獄寺君は頭がいいんだから、わかるでしょ?もし、守ってくれないようなら…さんの眼鏡、取っちゃうよ。」
「…そ、それは…。分かりました。言いません。」
「それと、『10代目』については、何にも言わないでね。」
「…はい。」
つくづく、オレって強くなったなーと思った。
「なぁ〜〜。」
「なに?」
「ツナ達遅いな。」
「そうだね…どうしたんだろ?」
本当に、ツナ君の様子はおかしいし、結局『10代目』の真相は掴めなかったし…後味悪いなぁ…。
私が思ってると、山本は「なぁ。」と声をかけた。
「ん?なに、山本君。」
「お前、獄寺に惚れてんだろ。」
「…え?」
…なんでばれてるの?
「んー超直感?」
「…ちょっと、山本君まで混乱させるような事言わないで…。」
「ハハハ、冗談だって。だってよ、ずっと獄寺に話しかけてんじゃねーかよ。そりゃ、誰だって察するぜ。」
「う…た、確かに…。え、でも、そしたらツナ君達も…?」
「いや、ツナも獄寺も気付いてないっぽいぜー。」
ま、せっかくだから応援するな〜と、山本君は言ってくれた。あれ、もしかして、味方が増えたのかな?なら、よかった…。
「でも、前途多難だな。」
「うん…。」
「ま、なんとかなるって。」
オレは獄寺君にしっかり言った後(ここまでくると、黒ツナと思われるかも知れないけど、違うからね!)、そろそろ男子トイレから出ようと、ドアに手を掛けてた。
「ツナ、は視界内にいれたほうがいいぞ。将来有望だ。」
…不吉だ。聞こえなければよかったのに。
「…リボーンさん、って…のことっスか?」
「あぁ、そうだぞ。あいつの足の速さはボンゴレに必要だ。」
あ、足の速さで…?
「あいつは野球部のマネージャーより、選手としていたほうがよかっだろうがな。」
「そ、そんなに…って、リボーン、そのカッコどうしたんだよ!」
リボーンは、水道管のような管に体を突っ込んで、そこから顔をだすという、どうにも不思議な格好をしていた。
「この格好で水道管の近くにいると、気付かれないんだぞ。」
「はぁ…。でも、さんまでマフィアに引き込むなんて…。ね、獄寺君。」
さっききつく言っておいたから、たぶん便乗してくれるだろう(いや、だから黒ツナとか言わないで!)。
「リ。リボーンさん…は、ただ足が速いだけでしょう?10代目にはオレだけで充分です!!」
ちょ…目がキラキラしてるのは、オレの気のせい?獄寺君…。
「安心しろ。お前は頼られちゃいねーからな。むしろ、お前がかばいすぎで、ツナが成長しねーから、少し休め。」
その毒舌によって、獄寺君の目は一気に死んでいった。オレは…もうなんといっていいのやら…(リボーンの言うこと全部に反論できないし)。
「…そうスか…。」
「ご、獄寺君!!大丈夫だよ!オレは全然迷惑してないからね!!今度から頼るからね!!」
「ま、そこで獄寺を慰めてろ。オレはをボンゴレに勧誘してくるからな。」
「獄寺君、ねぇ、大丈夫だから!!…え、リボーン?」
すでに、リボーンは男子トイレからでていた。
「…まだかなぁ…。」
「本当に遅すぎるな?ちょっと様子見てくっか…。」
「うん、山本君、よろしくね。」
オレが椅子から立ち上がろうとしたそのとき、
「その必要はねぇぞ。」
と、小僧の声がした。…そうか、さっきの殺気のひとつは、コイツだったんだな。
「よぉ、小僧。…そういえば、お前も久しぶりだったな。」
「あぁ、久しぶりだな、山本。元気にしてたか?」
「勿論だぜ。」
「…あの…この赤ちゃん、誰?」
は、小僧を指差し、言った。
「あぁ…そうか、知らねぇのか…。」
「オレの名は、リボーン。ツナの家庭教師をしてる。」
は、一瞬驚いた顔をしたが、すぐにもとの顔に戻って、小僧を抱えあげた。小僧は、おとなしくしている。
「そっか、はじめましてリボーン…君。」
「リボーンでいいぞ。」
「…うん、リボーン。私は…」
「だろ?ツナから聞いてるぞ。」
そういって、小僧はニッと笑う。その笑みに、もフフ、と声をもらす。
「そっか、私のこと知ってるんだ。よろしくね、リボーン。」
「よろしくな、。…と、さっそく話があるんだ。」
「ん?なぁに、リボーン。」
「お前、マフィアに興味ないか?」
「…マフィア…って何?」
「、マフィア知らねーのか?あのな、マフィアってのは、こう、銃がガガガンで、夜にダダダダン!!で、こう、ドガーンで、そんで、ズドドドン!!なんだぞ。」
オレは分かるように説明したつもりだった。が…
「…え、ごめん。よくわかんない。」
「大丈夫だぞ。そこらへんはちゃんと説明してやっからな。で、どうだ?やらねーか?」
そーか…小僧はもマフィアごっこにいれようとしてんだな…そりゃあ、楽しいだろーな。
「、マフィアごっこは楽しーぜ?ほかにもやってる奴がいっぱいいんけどよ…ま、すぐ慣れるって。」
「ごっこ?…いや、やっぱりマフィアとか、よくわかんないし…。」
「マフィアに入れば獄寺と付き合えるぞ。」
おっ、ナイスダメ押し、小僧!!って…それ本当なのか?
「入ります!!」
入るのかよ…。
「よし、それでこそだぞ。」
…オレ、もし駄目だった時のためにになぐさめる言葉考えてやろ…。
「…リボーン!!って、もう手遅れ…かな。」
「10代目!もうこいつがマフィアでもいいじゃないですか!!オレは別に、10代目の永遠の右腕っスから、問題ありません!!」
あぁ…獄寺君に「一生右腕でいいから」って言っちゃったから…もう、獄寺君だいぶテンション高いよ…
と、オレが内心焦っているところに、また何か事件の予感がした。
…オレ、疲れたんでもう帰っていいですか?