そういえば…ふたりって頭いいのかな?
標的2・不思議な出来事
「川田、栗原、近藤…。」
テストが返ってくる。そう思うだけで、ツナはぞっとした。
しかも、担当は性悪の根津。
「沢田、と。」
「え?」
「…はい。」
まだ女子の番号まで並んでないのに…。
ツナとは、同時にそんなことを思いながら根津の元へ行っていた。
ツナが根津の持つテストへ手を伸ばすと、わざとらしくテストを持ち上げられる。
「あくまで仮定の話だが、クラスにふたり、30点を下回る点数をとって、平均点を著しく下げる生徒がいたとしよう。」
淡々と話す根津に対し、ツナは冷や汗をかき、喉を鳴らす。
「あの……?」
「エリートコースを歩んできた私が推測するに、そういう奴は学歴社会においてお荷物にしかならない。」
そ…それって!!
ツナの予感は的中する。
「そんな奴等に生きている価値などあるのかねぇ?」
ピラリ、とテストの点数が露になる。
ひとつは26点。そしてもうひとつは…
「「「0点…!!」」」
クラスは騒然とする。誰もが、その0点はツナのテストだと思っていた。が、流石のダメツナといえど、0点を取るほど難しいテストだったか…?と疑念を浮かべていたのだ。
しかし…
0点のテスト用紙が、根津の手を滑り落ちた。(落としたのほうが正しいかもしれない)
ひらひらとテストは舞い、表向きで床に落ちる。
そこには、楷書でと書かれていた。
つまり、0点のテストはのものだったのである。
そのテストを、無表情で拾い上げる。落胆するような姿を見、根津は意地汚い笑みを浮かべた。そして、0点のテストがのものだという真実に、クラスはまたしても騒然とした。
「ふー…。」
の溜め息に、クラスは水を打ったように静かになる。
「まぁ……」
「これは当たり前の結果だからね!」
…え?
「根津先生、私が語学留学で日本に来たのをご存知ありませんでしたか?私は、それこそ話すことはできますが、読み書きはまったくできないんですよ。だから、0点で当たり前ですよね?まぁ…図をみる限り向こうで習った内容のようなので今から口頭で出題して下さればきちんと解くつもりですが」
ガラッ
の言葉を切るように、教室の引き戸が開いた。そこに入ってきたのは、転入直後から不良のレッテルを貼られた獄寺である。
「獄寺君…」
「獄寺、おはよー!!」
テスト用紙を持つ手を振り、満面の笑みで挨拶する。しかし、獄寺はそっぽを向く。
「なんだ?さんと獄寺、仲良いのか?」
「同じ転入生のよしみじゃねーの?」
「さっすが獄寺君、クールで素敵…」
クラスの中で多少ざわつきが起きたが、ツナには事の真相が見えていた。
そっぽをむくのは、クールだからではなく、照れてるからだ。獄寺の顔を見れば、ほのかに朱がかかっている。一応マフィアだし、ポーカーフェイスと言うのだろうか。昨日の件を知らない限り、わからない程度の火照り具合なのだが。
知っていても、ツナの隣にいる白銀少女は理解していないようだ。
「あれ?聞こえてないのかな…。」
まさか。
ツナがそう思うと同時に、根津は叫んだ。
「コラ!遅刻だぞ!今頃登校してくるとはどういうつもりだ!」
「あぁ?」
獄寺はお得意の睨みを根津に利かせ、見事に黙らせて見せた。
その姿に、『獄寺隼人ファンクラブ』は歓声を上げた。
「かっこいい…!」
「クール!」
一体女子(あの人たち)は獄寺のどこにときめくんだか…。
は、そんなことを思いながら自席に戻っていた。途中、近くにいた短い黒髪で、が野球部だと記憶している少年を見る。
どうせなら、こっちのほうが中学生って感じはするんだけどね。
内心、女子のくせに私って分からないな…と苦笑していたが、獄寺が根津の襟元を締め上げたところを見て、
「あ〜ぁ…」
失笑をもらした。
やがて、根津の後に続いて、ツナと獄寺は教室を退出することとなる。
「結局…あの人たち何処行ったのかな。」
「あの人たちって、ツナ君と獄寺君?」
「え?」
の独り言。それに反応したのは、人懐っこそうな笑顔が印象的な女子だった。見たことのある顔…ということは、ボンゴレ10代目と関わりのある人か。とは思った。しかし、名前がわからない。
「あなた…誰。」
「あ、ごめん。私、笹川京子っていうの。よろしくね
!」
そう言って、右手を差し出してくる。は、一瞬わけが分からなかったが、握手を求められてるのだとわかると、「ああ…こちらこそ。」と握り返した。
「ツナ君達、多分校長室だよ。」
「どうして?」
「今の先生ね、よく生徒を校長室に連れ込むんだ。噂だと、校長室で校長先生に退学を催促するんだって。だから、ツナ君達もそうかなって思ったの。」
「ふーん…。」
独り言で呟いてはいたが、はそんなに気にしてはいなかった。しかし、目の前の京子の様子が、少し引っかかる。
「あなた、」
「京子、でいいよ。」
「うん…ねぇ京子。」
「なに?」
「もし、京子の推測が正しかったら、2人は退学するかもしれない。クラスメートが退学するかもしれないって思ったら…そんなにニコニコしてられるものなの?」
の問いに、京子は「そうだね。」と答えた。
「でも、ツナ君達は退学しない気がするんだ。」
「…わからないな。」
「私も!」
クス、と笑い京子はその大きな目をに向ける。
「え?」
「なんとなくなんだけどね。大丈夫だよ、ツナ君は凄い人だもん。」
「…あぁ、そうかもね。」
休み時間。結局ツナと獄寺は戻ってこないし、リボーンに聞いてみることにした。
コンコン…ガチャン。
「、どうした?」
消火栓の扉から出てきたリボーンの姿を見て、の目は少し暗みを帯びた。
ドカーン…ドカーン…
グラウンドのほうで、爆発音がする。生徒は、授業そっちのけでグラウンドが見える窓へとかけよる。
は、見ずとも気付いていた。あの爆発音は、昨日のダイナマイトの爆発音と一致していたためだ。
クス、とまたしても失笑をもらし、生徒達に習って窓の外を見る。
「派手にやってるなぁ…まぁ、手助けはしてあげようか。」
そうが呟いた直後、獄寺が放っていたダイナマイトが、不自然な浮き方をして移動を始めた。しかし、校舎から見たらミリ単位の小さな筒を、一本一本観察しているわけがなく、誰もその浮遊移動に気付かない。その移動するダイナマイトは、下着姿のツナの真上に集中し、ツナが拳をグラウンドに叩きつけるのと同時に爆破した。
「よかったね、退学にならなくって!」
はツナの背中を叩き、ツナを驚かせた。
「!なんで退学のこと…」
「リボーンに聞いてたからね〜。もしも君たちが退学したとしてもさ、私はボンゴレの仕事が入れば会えると思って放置してたけど。」
その発言に、獄寺が食い付いた。
「テメーなぁ!オレがいたからよかったものの、もしいなかったら10代目が…。」
しかし、だんだんと声はしぼんでいき、獄寺はコクリ、とうつ向いた。
「…10代目が、何?よく聞こえなかったんだけど…」
そう言いながらは身を屈めて、獄寺の顔を覗き込む。
「なっ!」
と目が合うなり、顔を真っ赤に染める獄寺。そんな一面を見てツナは安堵の息を漏らす。
"なんだ、意外に年相応な反応するじゃん。"
「あ!そういえば10代目!」
火照った顔のまま、獄寺はテスト用紙と思われる紙をとりだす。明らかに話を脱線させるつもりだった。
「このガッコのテストって、ちょろいっスねー」
そのテスト用紙に並ぶのは、100点の赤い字。
「なっ…。」
「獄寺スゴッ!ね、日本語の読み書き教えてよ!」
「え、別に…構わねぇけどよ…」
「ほんと!?やった!」
見かけ(と言うより不良)のわりに勉強ができる獄寺に驚きながらも、獄寺がに会う理由ができてよかったなと思うツナだった。
「おまえも獄寺みたいに100点ぐらいとってみやがれ。」
「ぐらいってなんだよ!つーかどっから湧いてきた!?」
2008/11/21