転入生が、オレのクラスにやってきた。
しかも、二人。なんという偶然か、二人ともイタリアから来ていた。




標的1・絶世の美男美女




「イタリアに留学していた獄寺隼人君と、イタリアから留学してきた、 さんだ。」
突然教室に現れた二人に、クラスは騒然とした。
ツナも例外ではない。
イタリアって言うと、リボーンの故郷と一緒か…


感じるところは少し違っていたが。
獄寺隼人も、も、そこらへんを探したくらいでは見つからないくらい美人だったのだ。
「ちょ…かっこよくない〜?」
「帰国子女よ!」
「あの女の子、可愛いよな!」
「あぁ、あの美しさはクラス…いや、並盛にはまずいないな。」
ふぅ〜ん…女子はあんなのがいいんだ〜。
そう思って、ツナははっとする。急いで我がアイドル、笹川京子の様子を確認するが…

うわー、こころなしかニコニコに見える〜!

ツナは、獄寺隼人の顔をチラッと見た。すると、偶然にも目が合ってしまう。
ギロという効果音がつきそうなくらい、獄寺隼人におもいきり睨まれた。
「な、なんだよ〜!」
目が合っただけじゃないか!
そう思った刹那、獄寺隼人はズンズンとツナに近づいてくる。
さんの席はそこ、獄寺君の席はあそこ…って、獄寺君?」
担任の言葉は無視。獄寺隼人は、ツナの目の前まで来ると、机を蹴りとばした。
「でっ!」
それで気が済んだのか、獄寺隼人は担任が指した席に向かっていく。
なにすんだよ〜…
そうは思うが、口にはだせないツナ。
周囲にいたクラスメートは、
「ツナの知り合いか?」
「ありゃ絶対不良だな。」
と順々にこぼしたり
「それに比べ…さんはこう、可憐で、儚く散ってしまいそうな…。」
すでに席についていて、縮こまっているにうっとりとしていた。
一方、女子はというと、
「でもそれがいいの…」
「怖いところがシビレるのよね〜」
それぞれのファンクラブ結成は確実だった。


「ちぇ、なんだよあの転入生は…獄寺隼人だっけ…あーゆーノリついていけないよな〜。って人はまぁ…可愛いなって思ったけどさ…」
廊下で呟きながら歩いていたツナ。ボーッとしていたせいか、なにかにぶつかってしまう。
「お〜いて、骨折しちまったかもなぁ」
んげ〜!3年の不良だ〜!
ツナは顔を真っ青にさせながら
「ごめんなさい!ごめんなさい!本っ当すみません!」
と走った。

持田剣介との一件や、球技大会で同学年にはダメツナと呼ばれなくはなったが、上級生の、しかも不良の前では変わらずダメツナだった。


校舎をとびだし、息を整える。
「あっぶねー…下手したら半殺しになるとこだった…」
今日はもう散々だ…

「目に余るやわさだぜ。」
聞き覚えのない声が響く。
声をたどると、転入生として注目を浴びていた獄寺隼人が煙草に火をつけていた。
「き、君は転入生の…あ、」
その獄寺隼人のさらに奥には、同じく転入生のが校舎にもたれていた。彼女は煙草を持っていない。
だが、絡まれたらまた面倒になる…とツナは察し、
「それじゃ…これで。」
退散しようとする。
だが、次に聞くか細い声で、ツナの動きは止まった。
「あなたみたいな人を10代目にしたら、ボンゴレファミリーはおしまいですね。」
振り返ると、はにっこりと微笑んでいた。だがツナにとってはそれどころではない。
「え、なんでファミリーのこと…?」
まさか、学校にまでマフィアの話が出てくるとは。
「沢田綱吉。私はあなたを認めない。」
「10代目にふさわしいのは、このオレだ!」
振り向きざま、獄寺隼人はそう言い放った。は、少し目を見開くような仕草をするが、ツナはそんなことよりも、獄寺隼人の発言にリアクションを返すので精一杯だった。
「な!いきなりそんなこと言われても…」
「球技大会から観察していたが、貴様のような軟弱なやつはこれ以上見てるだけ時間の無駄だ。」



「失せろ」



そう言いながら獄寺は、何処からか紐がでている丸い筒を2本取り出した。
それはまさに―
「ば、爆弾!!」
思わず腰を抜かすツナ。獄寺は煙草で爆弾を着火し、ツナのほうに放り投げる。
「あばよ」

死ぬ…!!

ツナは腰を抜かす。目の前にある二本の爆弾は、ツナが倒れるスピードに合わせて動いているようだった。
その間にも、導火線は焼かれ、短くなっていく。

ジジジジ…チチッ。


導火線だけ器用に撃ち抜かれ、爆破せずに転がった。
「ちゃおっス」
「!」
やはりというか、導火線を撃ち抜いたのはリボーンだったらしい。
校舎の窓に腰掛け、右手には姿とは不揃いな銃を持っている。
そこは丁度、の真横。彼女は気づいていたのだろうか、チラリと横目で見るだけだった。
「リボーン!」
半泣き状態のツナを軽く無視し、リボーンは獄寺に声をかける。
「思ったより早かったな、獄寺隼人。」
「ええっ!知り合いなの?」
「ああ、オレがイタリアから呼んだファミリーの一員だ。因みに、はこのあいだオレが引っかけた新入りだぞ。」
「じゃあ二人ともマフィア―!?」
「獄寺隼人と会うのはオレも初めてだがな。」
「あんたが9代目がもっとも信頼する殺し屋、リボーンか…んで?」
獄寺の視線は、リボーンからに移る。
「そのリボーンが引っかけた新入りってくらいなんだから、そこそこ実力はあんだろうな、あぁ?」
獄寺は睨みを利かせるが、はまったく動じない。先ほどからの壁にもたれた姿勢、微笑を全く崩さないまま、逆に問う。
「…あなたこそ、リボーンに呼ばれて日本に来たくらいなんだから、強いのよね?」
「ったりめーだ。」
(…あれ?)
「おい、リボーン…」
「なんだ?」
「もしかしてふたり、さっきが初対面なんじゃ…」
「あ」



「そうだった。」



「なんですとー!?」
つまり、ふたりでオレを待ち伏せしてたんじゃなくて、たまたまなのか?
「それはちげーな。オレがここにふたりを呼んだんだ。」
得意の読心術で、リボーンが答える。
「え…?」
なんでだよ…。
ツナがそう返そうと思った矢先、と火花を散らしていた獄寺が、突然リボーンに声をかけた。
「沢田を殺ればオレが10代目内定ってのは本当だろうな。」
沢田…沢田…え、オレ?
「はぁ?何言って…」
「あぁ。そのためにここに呼んだんだからな。はマフィアの闘いを見学させるために呼んだんだぞ。それじゃ、殺し再開な。」
しれっとした態度で、"殺し"と言ってみせた赤ん坊に、ツナは声を張り上げる。
「おい!待てよ!!オレを殺るって、なに言ってるんだよ!冗談だろ?」
「本気だぞ。」
「なっ…」
ツナの顔面は、みるみる青ざめていく。
「オレを裏切るのか!リボーン!!今までのは全部嘘だったのかよ!」
怯えるツナを目標に、拳銃を構えるリボーン。それに合わせて、拳銃はチャ…と音を立てる。
「ちがうぞ。戦えって言ってんだ。」
「は!?戦う…?オレが、転入生と……!」
転入生、すなわち獄寺隼人。リボーンが言ってたじゃないか、ファミリーの一員だ…
「じょっ、冗談じゃないよ!マフィアなんかと戦えるわけ…!」
「待ちな。」
走り出すツナだが、その前に獄寺が立ちはだかる。
そして獄寺は、大量の煙草を口いっぱいにくわえ、火をつけた後、どこからか大量のダイナマイトを出し、着火させた。
「なぁっ!?」
驚くツナに、リボーンが解説する。
「獄寺隼人は、体のいたるところにダイナマイトを隠し持った人間爆撃機だって話だぞ。」




「またの名を、スモーキン・ボム隼人。」




「へぇ…。」
関心するのは、リボーンの隣で悠々と見物する
「そ、そんなのなおさら冗談じゃないよ!」
と、ツナは悲鳴にも似た声を上げ、右に90度方向転換し、ダイナマイトを構える獄寺から逃げようとする。
だがしかし、獄寺はツナの背後めがけ容赦なくダイナマイトを放った。

「果てろ」

宙に弧を描く幾本ものダイナマイト。それらの目標は、ツナ。
その存在に気付くと、ツナは奇声を上げる。
「うわぁー!!」
そして、火は筒の中に収まり―



ドカァァアン…!!!



「どひゃぁぁっ!!」
辛くも爆発から逃れたツナ。しかし、目前にひかえるのは校舎の壁だった。
「いっ行き止まり!?」
振り返りざま、
「うそ!!」
と叫ぶ。残念なことに、壁と獄寺にはさまれ、ツナの逃げ道がなくなっていた。
「終わりだ。」
すでにダイナマイトは着火され、獄寺は放った。
「ぎゃぁぁぁぁぁああ!!」


「死ぬ気で戦え。」


リボーンの手中にある拳銃が火を噴いた。

ズガン!!

「!!」
は、目を見開く。
「リボーン、なんてことを…!」
「まぁ見てろ。」
ツナの額に、弾は収まり、ツナはスローモーションのようにゆったりと倒れていく。
しかし、完全に倒れる前に、胸がもりあがり、下着姿の"死ぬ気モード"となったツナが出現した。
「復活!!死ぬ気で消火活動!!」
「なっ…!!」
の白い顔が、一瞬で赤に染まる。
「今、ツナの額に撃ち込んだのはボンゴレに伝わる"死ぬ気弾"だ。死ぬ気弾のことは、お前も知ってるだろ?」
「…なるほど…今回後悔したのは、獄寺隼人に正々堂々と戦うことではなく、ダイナマイトの爆発を逃れることだったんですね。」
「そうみてーだな。」
リボーンは溜息をつく。
(戦えと言ったのにな、まあツナらしいといえばらしいが)
「消す!消す消す消す!!」
次々と素手でダイナマイトの導線に付いた火をもみ消すツナ。獄寺は、その姿に動揺を見せる。
「なっ…。」
だが、獄寺は先ほどとりだしたダイナマイトの軽く倍の数を放った。
「2倍ボム!」
「消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す!!」
1本残らず、消火するツナ。獄寺は、それに怒りを覚え、さらに大量のダイナマイトを取り出す。
「3倍ボム」

「今だぞ、。」
「了解です。」
リボーンのつぶやきに、が応える。だが、は微笑んだまま何も行動を起こさない。ふたりの様子は、獄寺とツナには、見えていなかった。


ポロ…


獄寺の手から、ダイナマイトが1本、2本とこぼれていく。



ジ・エンド・オブ・俺…。



足元に転がるダイナマイトを見て、獄寺は自身の死を覚悟した。
「消す!」
「!!」
ツナは、獄寺の足元に手を伸ばし、瞬時に"3倍ボム"を消火させていく。
「死ぬ気弾の効果は絶大ですね。」
「まーな。」
そして、全てのダイナマイトと、ツナの額の炎が鎮火した。
「なんとか助かった〜。」
安堵の息をつくツナ。
「御見逸れしました!あなたこそボスにふさわしい!」
「え!?」
「ぷっ。」
驚くツナと、思わず噴出す。ツナが振り返ると、獄寺は土下座をしていた。
「10代目、あなたについていきます!なんなりと申しつけてください!!」
「はぁ!?」
「あっはははははっ!!あんた忠犬なのっあはははっ!!」
獄寺の豹変ぶりと、の余りにも明るい声に、ツナは動揺を隠せない。
「てめぇも礼を言いやがれ!沢田さんが消火してださらなかったらお前も爆発に巻き込まれてたんだぞ!!」
「ひえぇっ!!」
「はははっ何この態度の差!!…でも私は平気だから!あれくらい私なら逃げられるし!」
「「は?」」
ツナと獄寺の声がシンクロする。いやいや、あの量のダイナマイトが一斉に爆破したら、あの場にいた4人(でもリボーンは平気そうだな)は助からないだろうに…。
「まぁでも、みんな助かってよかったよ。…ツナ、あなたの活躍は脱帽に値する!私も忠誠を誓うとしましょう!」
ツナと獄寺の「は?」を軽く無視し、はツナの目の前まで歩み寄ると、右手を取り、そっと口付けをした。
「なっ!!」
「あなたに一生付いていきます。親愛なる10代目、沢田綱吉。」
そういって、はツナににっこりと微笑んだ。

ボンッ

ツナの横で、小爆発が起きる。
「な、何!?」
そこに倒れていたのは、獄寺。
「ん…獄寺、どうしたの?」
目を大きく見開き、獄寺の頬を叩いたりする。それを見下ろしながら、ツナは思う。
(あんただよ、あんた…)
へぇ…獄寺君て、こういう人が好みなんだ…。

2008/11/03